理系的な戯れ

理工学系とくにロボットやドローンに関する計算・プログラミング等の話題を扱って、そのようなことに興味がある人たちのお役に立てればと思っております。

log xの積分

logxの計算メモ

はじめに

Twitterを眺めていたらlog xの積分の話が出ていました。

毎年時期が来るとこの計算をやっているのですが、恥ずかしながら、いつも「できるかな?」と不安になります。 スラスラ解けるかなあ(汗)

正月休み中の頭の体操に思うままに解いていこうと思います。

部分積分

こいつの積分は部分積分という積分のテクニックを使うのが定石です。 でも部分積分のいわゆる公式を覚えてる人はあんまりいないのではないでしょうか?

僕は覚えていません。 (覚えていないはずなのですが、授業でラプラス変換を教えるときに毎年計算練習でやるので覚えそうになっています。)

部分積分は覚えていなくても積の微分は覚えているので、それでなんとかなります。

{\displaystyle
\begin{equation}
(f(x) \cdot g(x))^{'}=f^{'} (x)\cdot g(x) + f(x) \cdot g^{'}(x)
\end{equation}
}

以上が積の微分ですが、この式の両辺を積分します。微分したものを積分すれば、元に戻りますから左辺は微分のダッシュを外したものになります。

{\displaystyle
\begin{equation}
f(x) \cdot g(x)=\int f^{'}(x) \cdot g(x) dx + \int f(x) \cdot g^{'}(x) dx
\end{equation}
}

そして、ちょっこと左辺右辺で項を移項してやりますと

{\displaystyle
\begin{equation}
\int f^{'}(x) \cdot g(x) dx= f(x) \cdot g(x) - \int f(x) \cdot g^{'}(x)  dx
\end{equation}
}

これが部分積分の公式などと呼ばれている式となります。 慣れてないとこれを使って実際に積分をするのはなかなか難しいと思います。

まあでも、この式は必要十分なことは語っているので慣れるしかないのでしょうね、残念ですが。

そして、log xの積分にこれを使います。

部分積分の準備

さて部分積分を使うための準備をします。 準備というのは公式に出てきた {f(x)}{f^{'}(x)}{g(x)}{g^{'}(x)}それぞれに与えられた問題のどこを割り当てるかということです。 部分積分というのは積分したい式が何かの関数の積になっている場合に多用されるテクニックです。

でもlog xは関数同士の積になってないですよね。これは知っていればなんの事もないのですけど、以下のような割り当てを行います。

{f(x)=x}

{f^{'}(x)=1}

{g(x)=\log x}

{g^{'}(x)=?}

あれあれ、この部分積分の準備に{\log x}の微分が判らないとなりません。

ここで、またまた僕は覚えていなかったので。困ったわけです。正確には半分ぐらいはこうだったかなあと言う感じでうろ覚えでした。 でも、ネットや教科書で答えを見つけるのも正月の暇つぶしとしては面白くないので、微分の定義に戻っていっちょ求めてみたいと思います。

log xの微分

微分の定義はこんな感じです。(こっちは覚えている)

{\displaystyle
\begin{equation}
f^{'}(x)=\lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(x)}{h}
\end{equation}
}

この微分の定義に{f(x)=\log x}を当てはめてみればいいわけです。

{\displaystyle
\begin{equation}
(\log x)^{'}=\lim_{h \to 0} \frac{\log(x+h) - \log x}{h}
\end{equation}
}

これから、対数の性質を使って、以下のように変形します。

{\displaystyle
\begin{equation}
(\log x)^{'}=\lim_{h \to 0} \frac{1}{h}\log \frac{x+h}{x}
\end{equation}
}

さらに整理すると・・

{\displaystyle
\begin{equation}
(\log x)^{'}=\lim_{h \to 0} \log \left(1+\frac{h}{x}\right) ^{\frac{1}{h}}
\end{equation}
}
自然対数の底 ネイピア数

ここで、突然、自然対数の底であるネイピア数 {e} が登場します。元々logの底は {e} だったので今までも登場していたのですが陽には取り上げていませんでした、話をこれ以上に進めるためには {e} がなんなのかと言うことがどうしても必要になってきます。

{\displaystyle
\begin{equation}
e=\lim_{n \to \infty} \left( 1+\frac{1}{n} \right)^{n}
\end{equation}
}

これが {e} の定義ですが、「これは覚えてるのか!?」と突っ込まれそうですが、こっちの方が印象深いせいもあり覚えてました。 と言うか、だいぶ前に、授業中に学生さんに質問されて困ったことからちゃんと勉強しなおしました。教えると覚えるんですよ。

前の式と見比べてください。何か似てませんかね?

ここで、またまたトリッキーに見えることをします。

{\displaystyle
\begin{equation}
\frac{x}{h}=a
\end{equation}
}

としてみます。

すると、次のように式を書き換えることができます。

{\displaystyle
\begin{equation}
(\log x)^{'}=\lim_{h \to 0} \log \left(1+\frac{h}{x}\right) ^{\frac{1}{h}}=\lim_{a \to \infty} \log \left(1+\frac{1}{a}\right) ^{\frac{a}{x}}
\end{equation}
}

もう少し式を整理するとこんな風になります。

{\displaystyle
\begin{equation}
(\log x)^{'}=\frac{1}{x} \log \lim_{a \to \infty}  \left(1+\frac{1}{a}\right) ^{a}
\end{equation}
}

もうお分かりでしょうか、 {\log} の中身はネイピア数 {e} の定義そのものですので、式は次のようになりますね。

{\displaystyle
\begin{equation}
(\log x)^{'}=\frac{1}{x} \log \lim_{a \to \infty}  \left(1+\frac{1}{a}\right) ^{a}=\frac{1}{x} \log e = \frac{1}{x}
\end{equation}
}
部分積分の準備再び

部分積分の準備で脱線してここまできましたが、元に戻ります。

{f(x)=x}

{f^{'}(x)=1}

{g(x)=\log x}

{g^{'}(x)=\frac{1}{x}}

これで準備完了です。これらを部分積分の公式に当てはめていけば良いです。

ようやく部分積分

そして、もう一度、部分積分の公式を書いておきますと、以下です。

{\displaystyle
\begin{equation}
\int f^{'}(x) \cdot g(x) dx= f(x) \cdot g(x) - \int f(x) \cdot g^{'}(x)  dx
\end{equation}
}

では当てはめましょう。

{\displaystyle
\begin{equation}
\int \log x dx= x \cdot \log x - \int x \cdot \frac{1}{x}  dx= x \cdot \log x - \int dx
\end{equation}
}

したがって

{\displaystyle
\begin{equation}
\int \log x dx= x \cdot \log x - x +C
\end{equation}
}

答え出ました!

おわりに

これで正月の頭の体操が終わりです。 何回かやったことでもあるし、答えが出るのがわかっているので、楽しみながらパズル感覚でできますが、 以上のプロセスの間でも、やはり知らないとならない知識のようなものが実際にあるので、どこまで覚えて 使うのかの匙加減が 難しいですが、理系的な戯れとしては、この辺りが楽しんでやるためには必要な知識かなと思っています。 今回のお話で使った知識は次のようなものです。

  • 部分積分
  • 積の微分
  • 微分の定義
  • ネイピア数の定義
  • 極限の計算

計算はそんなに時間かからなかったけど、ブログでこれだけ書くのは結構時間がかかりました。令和2年の初投稿です。