はじめに
こんにちは、こうへいです
マイクロマウスのようなロボットの走行軌跡の計算には三角関数を含んだ 積分をしなければならないんですが、その場合、解析的に答えを出せない ことの方が多く、数値積分に頼らなけらばなりません。
そこで、数値積分ではなく三角関数をマクローリン展開した多項式を 適当な次数で打ち切ってその式を積分したらうまくいくかも!
と考えてみました。ところがマイクロマウスのスラローム走行の 検討で、同じことを鯉住さんが既に検討しているのを見つけてしまい みなさん似たような事を考えられていると感心しました。
自分もマウスのプログラムを少し書いていたので、 新しいものには新しい試みを載せてみたく思いました。
まずは、マクローリン展開の近似精度を計算して 可視化して遊んでみようと思った次第です。 はやく諸先輩方に追いつきたいものです。
前回、jupyter labの環境紹介したので それを使った計算にもなります。
マクローリン展開
関数の級数展開
何回でも微分可能な関数は次の式で示されるマクローリン展開(テイラー展開)によって、近似式が得れれます。
sinとcosのマクローリン展開
三角関数については以下のように展開されます。
Pyrhonで計算してみる
コード
Jupyter lab用に書いたcos関数のマクローリン展開近似を計算して、 numpyのcos関数の結果を比較して、誤差も 合わせて示すプログラムを以下にしまします。
%matplotlib widget import numpy as np import matplotlib.pyplot as plt #階乗関数 def factrial(x): if x>1: return x*factrial(x-1) else: return 1 #cos関数のマクローリン展開 def mycos(x,n): s=0 for k in range(n): s=s+(-1)**k*x**(2*k)/factrial(2*k) return s x=np.linspace(0, 2*np.pi, 200) y=np.cos(x) my=mycos(x, 5) plt.figure(figsize=(10, 5)) plt.subplot(211) plt.plot(x, y, lw=5) plt.plot(x, my) plt.ylabel('cos(x)') plt.grid() plt.subplot(212) plt.plot(x, y-my) plt.ylabel('Error') plt.grid() plt.show()
階乗計算関数とcos関数のマクローリン展開のmycos関数を自作しました。
mycos関数の第2引数が展開次数です。
計算結果
マクローリン展開は原点付近の近似式なので、原点から離れれば誤差が増えるはずです。 定義域を0から2πとして以下の計算をしてみました。
5次までの級数展開
10次までの級数展開
2πまでの範囲ならば10次まで展開すると、かなりcos関数に近いことがわかりました。
ちなみに10次の項の分母の階乗は20!=2432902008176640000となりとてつもなく大きくなり、マイコン等で計算するのがギリギリです。
三角関数はπ/4まででOK
三角関数はπ/4まで計算すると、あとは線対称な形状をしているので、そこまでの値があればすべての定義域での値が得られる。 すると、以下のように5次ぐらいの近似で使えそうです。実用上はもう少し下げても行けそうな気がします。
最後に10次まで重ねてみた
これを見ると、π/4までなら4次でも良さそうです。
上のグラフのコード
%matplotlib widget import numpy as np import matplotlib.pyplot as plt def factrial(x): if x>1: return x*factrial(x-1) else: return 1 def mycos(x,n): s=0 for k in range(n): s=s+(-1)**k*x**(2*k)/factrial(2*k) return s plt.figure(figsize=(8, 5)) x=np.linspace(0, 2*np.pi, 200) y=np.cos(x) plt.plot(x, y, lw=3, label='cos(x)') for n in range(10): my=mycos(x, n+1) plt.plot(x, my, label='n={}'.format(n+1)) plt.xlim(0, 2*np.pi) plt.ylim(-1.02, 1.02) plt.ylabel('cos(x)') plt.legend() plt.grid() plt.show()
おわりに
はじめて1日で2記事更新してみました。
1つめが計算環境紹介、2つ目が計算環境で計算したものとなりました。
昔は、走行するマイクロマウスにコプロがついていないマイコンでどうやってオドメトリによる自己位置推定させようかと 色々悩んだものです。マクローリン展開も考えましたが、実数使えないと、固定小数点演算を自分で書かなければならず 途中であきらめ、三角関数テーブルと線形補完でしのぎました。
では、また